予防に勝る治療なし!のお話

前回インフルエンザワクチンの事を少し書いたので、今回はその他の予防接種の話を書いてみます。

予防接種とは

予防接種は、日本における予防接種法では、「疾病に対して免疫の効果を得させるため、疾病の予防に有効であることが確認されているワクチンを人体に注射し又は接種すること」と定義されています。

つまりその病気に罹ることを予防したり、罹っても重症化するのを防いだり、人から人に感染が広がることを防ぐことを目的として行います。 

ワクチンによる予防接種を最初にした方

ワクチンを用いて最初に予防接種を行った人として超有名なのはイギリスのエドワード・ジェンナーという医師です。

エドワード・ジェンナー

病原菌を体内に入れて免疫を作るという手法自体はもっともっと遙か昔から行われてきましたが、“予防接種”という言葉を使ってこれらの行為を系統立てて実践した最初の人はこのジェンナー医師です。

ジェンナーが行ったのは、今ではもう根絶された(研究目的のための株はありますが)天然痘という病気のための予防接種です。この天然痘ウイルスのワクチンである“種痘”はその後改良されて全世界で使用され、1980年にWHOは地球上からの天然痘根絶宣言を発しました。

ちなみに日本では1975年までこの種痘が接種されており、1974年(昭和49年)生まれまでの人は接種を受けています。この接種を受けると接種部に瘢痕組織ができるのでこれがあるかないかでその人が何歳以上あるいは以下というのが分かります。

令和2年(2020年)現在瘢痕のある方は少なくとも46歳以上・・・うーんもう痕があってもなくてもあまり気にならないんじゃないのでしょうか・・・はい、そんなことないですね、はい、すいません。

もちろんわたくしの右肩にはしっかりと瘢痕組織がありますけど、それがなにか?

シミだらけの見苦しい肩ですいません。矢印の先が種痘の痕

閑話休題

ワクチンには大きく分けて3種類あります。

生ワクチン

ウイルスや細菌などを単に毒性を弱めた状態で使用するモノで、いわゆる“生(なま)”です。さすがに“なま”を使っているだけあり獲得される免疫力も強く、免疫の持続期間も長いことが多いです。ただ弱めているとはいえ病原体そのものを使うため、そのウイルスの感染による反応が出る事もありますし、また免疫不全症等の場合は接種できないこともあります。

代表的なもの

BCGワクチン、ポリオワクチン、麻疹ワクチン、風疹ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン(おたふく風邪)、麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)、水痘ワクチン(帯状疱疹)、ロタウイルスワクチン

不活化ワクチン

不活化ワクチンは処理することにより死んだウイルス細菌を使用するモノです。生ワクチンよりも安全性は高いですが、免疫の続く期間は短く、複数回接種が必要なものも多いです。生ワクチンと違い免疫不全症の場合でも普通に投与できます

代表的なもの

インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン(小児用と高齢者用あり)、Hibワクチン(インフルエンザ桿菌b型)、二種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風混合)、三種混合ワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風混合)、不活化ポリオワクチン(IPV)、四種混合ワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風・不活化ポリオ混合)、日本脳炎ワクチン、百日咳ワクチン、肺炎球菌ワクチン、A型肝炎ウイルスワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン、ヒトパピローマウイルスワクチン(HPVワクチン、子宮頸がんワクチン)

トキソイド

ある病原体の産生する毒素(外毒素)を抽出して化学処理し、毒性を抑えて抗原性のみを残したもの。体内に入れることによりその毒素に対する抗体を作らせるというものです。厳密にはワクチンという概念には含めないとも言えます。

当院では上記ワクチンは基本的に全て接種できます。

ワクチンの副反応とワクチン拒否

ワクチンは弱くしているとはいえ、あえて病原体を体内に入れる事になるので、副反応が出る事もあります。注射部位周辺の発赤・腫脹・疼痛等の局所症状から発熱、倦怠感などの全身症状、はては無菌性髄膜炎や特殊な自己免疫疾患までいろいろなことが発症する可能性が常にあります。そういったことからワクチンを受けたくないとする人も一定数います(拒否する方は副反応のみが理由ではないようですが)。これは考え方や価値観の違いですからどちらが良いも悪いも言えません。わたくしは予防接種推進派ですが、ワクチンを受けたくない方を非難する気もなければもちろん強制する権利もありません。接種するかどうかはその人の自由意思です。ただ、例えば子宮頸がんワクチン(ヒトパピローマウイルスワクチン (HPVワクチン)は、接種により重篤な副作用が出たことから接種推奨は中止ということことになり、多くの方がその副反応を恐れて接種拒否をされていますが、わたくし個人の見解としては、注射を数回することで癌が予防できるなんてこれほど画期的な癌治療の方法(なる前に治す!みたいな)はないのではないかと思ってます。

で結局なにが言いたいのか?

とどのつまり予防に勝る治療なしということだよ!

まあ確かに予防接種を一度に4本も5本も注射されてる(ってわたくしがしてるんだけど)赤ちゃんをみてると、こんなに一度に何本も針を刺されるんやったら死んだ方がマシやわー!とも思うこともしばしばありますけどね・・・。