コロナウイルスワクチンは筋肉注射!…注射の種類と痛みについて

大寒も過ぎて寒さも少し緩んで来るかななと思っていましたが、まだまだ寒さは続いているよと感じた1月最後の月曜日。

朝、診察中に突然うちのナースAが

「先生!先生!!コロナウイルスワクチンは筋肉注射でするらしいですよ!」

となぜかニヤニヤと笑いながらわたくしに話かけてきました。

ナースAは、わたくしがこの世で最も恐れているモノの一つが“注射”であると言う事を知っていたためこのような暴挙にでたと推測されます。

つまりナースA的にはインフルエンザワクチンなどは皮下注射でしていますが、筋肉注射ので行うコロナワクチンの接種はそれに比べたらきっときっとすんごく痛いですよー(エヘッ)ってことを言いたかったようです。

と言う事で、今日はこの“注射”について書いてみます。

注射とは

端的にいうと針を使って直接体内に薬剤を注入する方法のことです。

薬剤を体の中に入れる方法としては、口から(経口薬)、お尻から(座薬)、皮膚・粘膜から(貼付剤や軟膏)、気道から(吸入薬)、眼から(点眼)などいろいろなやり方がありますが、注射は薬剤を直接に体内に投入できるため他の投与方法より効果が出るまでの時間が短く、また薬剤が吸収される過程でその量が減ったり、成分の変性を起こすことが無く投与できるというメリットのある方法です。

しかし!この注射にはそのメリットを遥かに凌駕する恐るべきデメリットがあります。それは、それぞれの感じ方に程度の差はあれど十中八九ほぼ必ず

痛い

です。さらに人によっては恐怖さえも憶えます。

注射の種類

まず、一言で注射といっても、針が入る場所によって4種類の注射があります。

  • 皮内(ひない)注射
  • 皮下(ひか)注射
  • 筋肉注射
  • 静脈注射

他にも関節内注射や髄腔内注射、腱鞘内注射、硬膜外注射などいろいろありますが、一般的なイメージの“注射”といえばこの4種類になります。

皮膚~筋肉の断面

皮膚から筋肉をイラストで描くとこんな感じですが、この表皮から筋層の間に神経や血管(動脈、静脈)等が走ってます。これのどの層まで針を進めるかで注射の種類が変わります。

皮内注射

皮膚のもっとも外側にある表皮とその下の真皮のあいだに薬物を注入する注射です(青い→)。アトピー性皮膚炎や気管支喘息などのアレルギー検査やツベルクリン反応など特定の薬物に対する反応のチェック目的で行うことが多いです。

皮下注射

皮膚と筋肉の層の間にある皮下組織に薬物を注入する注射です(青い→)。効果があらわれるまでに時間がかかりますが、長続きするのが特徴です。インフルエンザワクチンや水痘(みずぼうそう)ワクチン、日本脳炎ワクチンなど、日本で行われている予防接種の多くは、この方法が用いられています。

筋肉注射

皮膚表面からもっとも深いところにある筋肉に薬物を注入する注射です(青い→)。静脈内注射の次に早く効果があらわれ、刺激の強い薬物でも注入できるのが特徴です。HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンや、B型肝炎ウイルスなどの予防接種の他、不妊治療等で行うホルモン注射などはこの方法が用いられています。今回のコロナウイルスもこの筋肉注射で行うようです。

静脈内注射

血管の静脈中に直接、薬物を注入する注射です(青い→)。容量の制限もなくすばやく体中をめぐるため、注射の中ではもっとも早く効果があらわれます。点滴も静脈内注射の一つで薬物以外にもや水分や栄養分も注入します。

注射の痛み

①第一の痛み・・・皮膚の痛み

注射の針が皮膚を刺す時の痛みは、皮膚の表面にある「痛点(つうてん:痛みを受ける感覚器)」があるためで、痛点は、皮膚の表面1平方センチメートルあたり100~300ほどありそこを針が当たると痛みを感じます。・・・つまり痛点を避けて針を刺せれば、痛みがないということになります(偶然以外に狙ってとかなんてまあ無理ですね)。

②第二の痛み・・・薬剤注入部位の痛み

皮膚から筋層にかけての組織は基本的には一枚岩の様な状態で隙間無くくっついています。その隙間のない部分に強制的に液体を入れるわけですから、入れたその体積分の組織が引き裂かれてさらに周りを圧迫します。その物理的な痛みが生じます。・・・そりゃ痛いですわな。

ただ静脈注射では血管内(空洞内)に打つわけですからこの痛みはないと言うわけです。

③薬物の浸透圧やPHの違いによる痛み

浸透圧(しんとうあつ)とは、濃度の違いにより生じる圧力のことで、pHとはその物質が酸性かアルカリ性かをしめす基準値のことです。血液もだいたい決まった濃度とpHがありますが(細かい数字は割愛)、血液とその薬剤の浸透圧の差が小さいほど、pHの差が小さいほど刺激が弱くなり、痛みも小さくなります。

④心の痛み

わたくし的にはこれが一番痛みの強さを左右する要素だと思います。

ここです。この赤い○の部分を見るだけで・・・もとい、このとんがったものが柔肌を刺すのを想像するだけでも体が震えるほどの恐怖を感じます。

あっ、これ、わたくしの個人的な意見でした。

注射って物理的・化学的な痛みはそれほど大したことなくて(もちろんどんな注射かによって変わりますが、量や成分はある程度考えられているわけですから)、それよりもとがったモノで体を刺されるというイメージが必要以上に痛みを増強させているんだと思います。ですから逆に言うとこのイメージを払拭できれば痛みも減らせて、恐怖もなくなるんではないかと思います。

②や③の痛みはその薬剤上どうしようもありませんが、①と④の痛みならやり方によっては少しは和らげれるのではないかとわたくしもいつも我が身のつもりでいろいろ考えております。

ものすごく細い針で(①の対策)できるだけ早く恐怖を感じる前に打つ(④の対策)ようにしてます。あとは、「こっちは見ないでよー。向こう見ててね〜」と声をかけたりしてます(と言っても多くのお子様はしっかりと針先を見て泣いてますが)。

当院で予防接種に使っている注射。上の赤丸の針の10分の1の細さです。

そうそう、ちなみにわたくし注射されるのは大大大嫌いですが、人様に注射するのは大好きなんです・・・それがなにか?