当院では運動療法に力を入れていると書きましたが、その運動療法の一つにファンクショナルトレーニングというものがあるのをご存じでしょうか。海外では結構有名なトレーニングの一つなのですが、日本ではパーソナルトレーニングジム(一人ひとりの状況や目的に合わせて、トレーナーがマンツーマンで個別指導を行うジム)等ではよく取り入れられているようですが、一般的にはまだまだ認知されていない(とわたくしは思っている)トレーニング法です。
まずファンクショナルトレーニングとは日本語で言えば「機能トレーニング」、「動きのトレーニング」と言うものです。これはある一部位に負荷加えてを特定の筋肉のみを強化していくようないわゆる筋トレではなく、体本来の機能性(ファンクショナル)を向上させ、目的動作を無駄なくできるような身体の動かし方を習得させるトレーニングです。これを行うことでリハビリテーションやトレーニングにおいてその成果の向上だけではなく、怪我の予防等にも効果を発揮するといわれています。
五大原則
ファンクショナルトレーニングは“動き”のトレーニングですが、このトレーニングを行うにあたり基本となる五大原則というものがあります。
①重力(Gravity)
重力と言われてパッと思い浮かべるするシーンは

こんな感じかもしれませんが、これは“無”重力のことです。
いわゆる重力とは、地球上で物体が地面に引き寄せられる力(もっと細かく言うと地球の遠心力と引力を合わせた力のことです)のことで、ファンクショナルトレーニングは常にこの重力に抵抗した動作を意識して行うものです。

こんな感じです。
②共同(Integrate)と分離(Dissociate)
なんだか精神科で行う治療プロセスの様な言葉ですが、これは身体が機能的な動作を行おうとした時は、各関節が「動き」と「固定」の役割(機能)を分担し、動作の中ではそれらが同時に活動し、全ての関節動作を共同させるというものです。例えば、走るという動作は足を上げるときには股関節が大きく動かし腰椎は固定するという役割を分離しかつ共同することで機能的な動作となります。


③キネティックチェーン(Kinetic Chain)
この言葉からは

このようなチェーンを想像されるかと思いますが、実際は全く違います。
キネティックチェーンとは運動連鎖といわれるものです。つまり人の運動動作は1つの筋肉だけで行われているのではなく、多くの筋肉が連動することによって起こっているということです。機能的な動作を行うためには筋肉だけではなく、体のアライメントや神経、代謝や心肺機能など全身の機能が協調して働くことが不可欠なため全身運動を行うことが大切です
④3面運動(3 Dimension Movement Pattern)
三面とは

の三面(正面、側面、後面)ではなく!!!

矢状面(前後の動き)、前額面(左右の動き)、水平面(回旋運動)
の三面のことを指しています。一般的に動作はこれらの動きすべてで構成されているので、ファンクショナルトレーニングではこの3つの面の動きを常に考え取り入れます。
⑤力の吸収(Loading)と力の発揮(Unloading)
人間の体において、効率的に大きな力の発揮(Unloading)には、必ずその方向と反対の方向に力を溜める(吸収)(Loading)という動作が必要です。
たとえばジャンプ動作では大きく飛ぶ前に体を前傾して下肢を屈曲する動作を取り、そこからバネのように下肢を伸ばす動作でジャンプします。このしゃがむ動きが力の吸収(Loading)で、跳びあがる動きが力の発揮(Unloading)ということです。

ファンクショナルトレーニングの流れ
1.アセスメント((評価・分析)・姿勢・動作の修正
機能的な動きを身につけるために、まずは姿勢や動作のパターンをまず理解しそれを分析・評価することで自分の体の動きを修正します。
2.アクティブストレッチ((ダイナミックストレッチ)
トレーニングを行う前にストレッチを行い関節可動域を広げて動きやすくします。
3.コアトレーニング
体幹の筋肉を鍛えて四肢の動きに適した関節の可動性を促す体幹の安定性をつくるトレーニングです。
4.バランストレーニング
不安定な状況でも適切に姿勢・運動をコントロール出来るようにバランス力を鍛えて行くトレーニングです。
5.ストレングストレーニング
実際の動きに近い運動様式での自重で行えるトレーニングです。
6.ストレッチ
運動後のストレッチで、筋肉が固くならないようにし、可動域を維持・向上させます。
ファンクショナルトレーニングで期待できる効果
- 競技パフォーマンスの向上
- 怪我の予防
- 姿勢のゆがみの改善
- 肩こりや腰痛の予防
- 効率の良い動作が行えるようになる
- 体を引き締めるシェイプアップ効果
肩こりや腰痛の予防効率の良い動作が行えるようになる
ファンクショナルトレーニングの注意点
筋肉を鍛えるトレーニングではありませんし、ファンクショナルトレーニングのみを行った場合は逆に筋肉量が減少することもあります。
まとめ
ファンクショナルトレーニングは、身体の「機能」を向上させ効率的に動作を行えるようにするためのトレーニングです。言い換えれば『身体を動かしやすくするためトレーニング』ということです。
※他の運動療法や筋トレよりも優れているというものではありません。