多汗症とその治療とエクロック ゲル

11月もそろそろ下旬に入る頃ですがなんだか暖かい日が続いております。日本列島が高気圧に覆われているからだそうで今週末まではこの暖かさが続くようです。暖かいといっても汗ばむほどではありません。また今週末から冬型気圧配置になってまたどどーんと気温が下がるようなのでその気温の落差で体調を崩さないようにしないといけませんね。

ん?・・・汗ばむ・・・汗ばむ・・・汗・・・汗・・・汗と言えば、そうそう、多汗症の方がちょくちょく当院を受診されます(強引な話のもって行き方ですなあ)。

多汗症

まず多汗症とは、その言葉の通り汗を異常に多くかく疾患です。汗を異常にかくと言っても暑い時に人よりも異常に汗をかいたり、緊張や不安でドキドキしたりしたときに汗が異常ににじんでくるというのは多汗症ではありません。前者はただの汗っかきで後者は手の平に“人”という字を書いて飲み込みなさい。多汗症の患者さんは、暑い寒い等の環境や精神状態に関係なく常に汗が過剰に出ています。

具体的な症状

  • 常に服のどこかが濡れている。
  • 学校や会社で用紙に何かを書こうとすると汗で破れる。
  • スポーツ用具などが濡れてしまいスポーツがしにくい。
  • 他の人と握手やハグがしにくい。
  • パソコンのキーボードが打ちにくい。
  • 紙幣やレシートの受け渡しなどで相手に気を遣う。
  • たえずハンカチや手ぬぐいなどを持たなくてはならない。

・・・等など日常生活で困るシーンが多々あります。

多汗症の種類

そんな多汗症ですが、その中には全身に汗がふきだす全身性多汗症と体の一部(手のひら・顔・頭・腋・足のうら等など汗腺の多い部分)に限局して汗が増える局所性多汗症があります。ただ、全身性多汗症は全体の1割程度くらいで、圧倒的に局所性多汗症患者が多いです。

全身性も局所性も原因のわからない原発性と何らかの疾患に併発して起こる続発性のものがありますが、全身性、限局性どちらもほとんどが原因の分からない原発性です。

多汗症の診断基準

多汗症の診断ですが、まず特定の部位に原因のわからない過剰な発汗が6ヶ月以上続いた場合に以下の6項目のチェックします。 6 項目のうち 2 項目以上あてはまる場合は原発性多汗症と診断されます。

  1. 最初に症状がでるのが 25 歳以下であること。
  2. 対称性に発汗がみられること。
  3. 睡眠中は発汗が止まっていること。
  4. 1 週間に 1 回以上多汗のエピソードがあること。
  5. 家族歴がみられること。
  6. それらによって日常生活に支障をきたすこと

この診断基準に当てはまった場合、発汗検査などを追加して診断を確定することになります。

重症度分類

多汗症は、症状から4段階に分類されます。重症と診断された場合は、発汗部位や症状に応じた治療をおこないます。

Grade1

発汗があっても気にならない程度で、日常生活にも支障はない。

Grade2

発汗はあるが我慢できる程度。でも日常生活で時々困ることもある。

Grade3

発汗はかなり辛いが耐えられる。日常生活で発汗に悩まされることが多い。

Grade4

耐えがたいほどの発汗があり、日常生活に支障が生じている。

※一般的に「重症」と診断されるのはGrade3やGrade4に該当する場合です。

治療

多汗症の治療法としていくつかの方法があります。

  • 塩化アルミニウム六水和物溶液塗布
  • 水道水イオントフォレーシス
  • A型ボツリヌス毒素注射
  • 経口抗コリン薬内服
  • 手術

塩化アルミニウム液

塩化アルミニウム溶液は,昔々からある多汗症に対するぬり薬で(治療のガイドラインでは第一選択薬です)、汗を出す管(汗管)を閉塞させて発汗を減少させます。さらに最近の研究では、ずっと外用していると汗の出る穴を閉塞させるだけでなく、汗を作る汗腺そのものを萎縮変性させ、汗そのものの産生を抑えることができることがわかってきております。

ただ万人全てに一様に同じ効果が出ると言うわけではないので、効果があまりない方や液の刺激が強すぎて塗れないという方も一定数はいます。

水道水イオントフォレーシス

水道水イオントフォレーシスとは,電流を用いて塩類のイオンを皮膚に浸透させる方法で、電極を設置した容器に水道水を満たして患部を浸し,15~25mAの電流を10~20分間流します。この手順を1週間にわたり毎日行い,その後は週1回または月2回の頻度で繰り返すというものです。この方法は手間がかかったり、毎日行わなければならない、治療部位が限定される(基本は手と足)などからなかなか行いません。ちなみに当院では行っていません

A型ボツリヌス毒素注射

A型ボツリヌス毒素で一番有名なのはご存じボトックスです。この毒素は交感神経から発汗の指令を出すアセチルコリンを減少させる作用があるので多汗症が改善されます。注射後2~3日で効果があらわれ、その効果は約3~6か月ほど持続します(個人差あり)。この注射は効果的であはあるのですが、局所の筋力低下や疼痛、頭痛などがあり、さらに高価です(ボツリヌス毒素注射で保険適応されているのは腋窩多汗症だけ)。当院でも行っておりますが、持続期間や副作用、価格などを説明するとあまり希望はされませんねぇ・・・。

経口抗コリン薬

一部の患者には経口抗コリン薬の内服薬が効果あります。ただ、副作用として,口腔乾燥,乾燥皮膚,紅潮,霧視,尿閉,散瞳,不整脈などがり、緑内障や前立腺肥大の患者には投与できません。

手術

保存的治療では改善しない場合は手術もあります。腋窩の汗腺を外科的に除去する方法や胸腔鏡下交感神経切除術などがあります。どの方法も局所多汗症の適応ですが、手術に伴う侵襲や合併症等もあり気軽にはしにくいです。

エクロック ゲル

そんな多汗症の治療に新しい治療薬が開発されました。その名も“エクロック ゲル”。

令和2年12月に科研製薬から新発売されます。

これは「原発性腋窩多汗症」を治療する国内初の外用薬で、ソフピロニウム臭化物という、その名前を聞いても全くイメージわかない成分の抗コリン作用を有する薬です

作用機序はこんなんらしいが・・・

多汗症は、エクリン汗腺という汗腺において上にも書きましたが交感神経からでるアセチルコリンという物質が汗腺を刺激することで起こります。エクロックゲルはこのアセチルコリンをブロックすることで汗を止める・・・ということらしいです。

使用方法

アプリケーターの上面にエクロック®ゲルをのせて、1日1回適量を腋窩に塗布します。必ずアプリケーターを使用し、薬液には手を触れないようにします(手を使って塗布しない!)使用量は、右わきにポンプ1押し分、左わきにポンプ1押し分です(本剤1本(20g)が14日分に相当します)。

薬液を塗った後、腋が乾くまでは寝具や衣服が触れないように注意必要必要。使用後のアプリケーターに残った薬液は、ティッシュペーパーなどでていねいに拭き取るか、水で洗い流してください。

※この薬も抗コリン作用があるので、緑内障や前立腺肥大の方は使えません。

今までは腋汗の塗り薬というと自費の塩化アルミニウムが主流でしたが、今回それほどの手間も侵襲も無く、さらに保険適応もされる薬剤が登場するということは、多汗症治療に新しい流れができるかもしれませんねー・・・。

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