2月に入り少し寒さの緩む日もでてきました。まだまだ新型コロナウイルス感染症の話題が毎日のニュースを賑わせていますが、例年この時期になると必ず話題に上がってくるものがあります。“花粉症”です。昨年から手洗い、マスク、三密回避など新型コロナウイルス対策を徹底して行っているためインフルエンザ患者が激減しておりますが(当院では今シーズンは今だ0人です)、花粉症は必ず患者は現れます(年により飛散量が違い程度に差はありますが)。
花粉症とは
植物の花粉が原因でアレルギー症状(Ⅰ型アレルギー反応)を起こす疾患です。
つまり花粉症とは原因となる花粉の飛ぶ季節にだけ症状が出る季節性アレルギー性疾患の総称です。その他ハウスダストやダニなど一年中存在するものが原因となる通年性アレルギー疾患があります。
患者数は年々増加傾向で、日本国民のおよそ4分の1が花粉症に罹患していると言われています。
原因
原因となる植物は、スギやヒノキ、イネ、シラカバ、カモガヤ、ヨモギ、ブタクサ、などがありますが、それぞれの種類によって花粉の飛散時期が異なります。スギの場合は2月以降、ヒノキの場合は3月以降、シラカンバ(カバノキ科)カモガヤ (イネ科)の場合は4~6月にかけて、ブタクサ、ヨモギ(キク科)は9~10月に流行がみられます。日本はスギ林が多く、スギ花粉症の患者が圧倒的に多いです。
病態
眼や鼻や咽頭の粘膜に花粉が付くと免疫反応が起こり、花粉を異物として認識し抗体(IgE)という抗原に対抗すると物質を作ります。抗体は体のなかで肥満細胞(太っている人に多い細胞とかではなく、見た目が膨張している細胞)にくっつきます。それからさらに花粉がくると抗体が抗原とくっつきそれが引き金となって肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンといった物質を放出します。これらの物質は神経や血管を刺激することで炎症を引き起こします。その状態がいわゆる花粉症です。
症状
花粉が付いた場所の粘膜に炎症症状を起こします。眼なら結膜炎症状「目の痒み」「充血」「流涙」くしゃみ」、鼻なら鼻炎症状「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」、喉なら咽頭炎「咽頭痛」「咳嗽」「喀痰」等を起こします。その他頭痛や皮膚の乾燥、掻痒感なども起こします。
症状の程度は花粉の飛散量、曝露時間などによってさまざまです。
検査
その人の体でアレルギー反応が起こっているかどうかは血液検査で「非特異的IgE抗体測定」を行えばわかりますが、そのアレルギーの原因物質を特定するには「特異的IgE抗体測定」が必要です。その他、原因として疑われる物質でアレルギー反応が誘発されるかを確かめる「鼻粘膜誘発テスト」や皮膚の反応をみる「プリックテスト」「皮内テスト」などがあります。
治療
原則の対策
花粉症の治療では、まず第一は「原因物質の回避」です。100%の回避が難しいとしても花粉の飛散情報には注意し、飛散が多い日はできるだけ外出を控え、どうしても外出が必要な時は眼鏡やマスクを着用し帰宅時にはすぐに服を脱いで洗濯機に放り込むなどの対策が必須です。
薬物療法
花粉症の最も一般的な治療です。抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬等のアレルギー薬の内服、点眼やステロイド剤の鼻腔内噴霧を行います。点眼や点鼻薬などの局所外用薬は症状がひどい時などに行いますが、内服薬はその花粉シーズンに入る前(症状が出ていないうち)から内服を開始することでより効果を出せます。
どの薬剤がおすすめですか?とかより強いのはどの薬剤ですか?等とよく訊かれるのですが、抗アレルギー薬というカテゴリー内では製薬会社ごとに薬剤の成分の違いはありますが、正直言って効果の差はそれほどありません(知らんけど)。その人に対してその薬が合ってるかどうかしかありません。
あと眠たくなるかならないかもよく訊かれます(よく訊かれることその2)。眠くなりません!とメーカーが言っている薬もはありますが、これも個人差があって眠たくならないと言われている薬でめっちゃ眠たくなったという人もいれば、眠気には気をつけてと言っている薬を飲んで眼が冴えたという方もいます。ホンに医療は難しい。
免疫療法
以前は脱感作療法を呼ばれていた方法で、極々少量のアレルギー抗原を注射で数年渡って投与し体になれさせるというものです。最近、これを内服薬(舌下薬)でおこなうことができるようになり、注射嫌いや怖い人(誰?)に対してグググーッと敷居を下げてきました。ただし、治療を開始するのはその花粉症のシーズンをずらす必要があると言うこと、治療期間はやはり数年は必要、適応のある抗原は限定されているというのがネックになるかなあ。
わたくしも個人的に免疫療法しております。で結果を言いますと、もうめちゃくちゃ楽になりました。今まで花粉症にかなり苦しめられていましたが、今はその時期が来ても全然憂鬱にならなくなりましたよー。
レーザー治療
鼻炎に対してのみ行える処置で、花粉のシーズン前に行います。レーザーで鼻の粘膜を焼灼します。これにより粘膜の凝固・繊維化を起こさせ鼻の中の空間を広げ分泌物を減少させます。また粘膜組織が変性するので抗原が付きにくくなり鼻炎症状を起こしにくくします。粘膜組織は徐々に再生されますので症状はまた現れます。レーザー治療は繰り返し行うことが可能ですが花粉症を根治させることはできません。
禁断の悪魔治療
昔から悪魔の治療法と恐れられる禁断の治療法があります。これは簡単に言うとおしりなどにステロイド注射打つという方法です。これだけです。しかも一回注射するだけでそれ以上のことは何もありません。使用するステロイド剤も別に特別なモノではなくごくごく普段外来で使っている薬剤です。しかし、この治療を行うと恐ろしいくらい、もうびっくりして目が飛び出るくらい劇的な効果があります。たった一回の注射でそのシーズンは一切なんの医療処置もしなくても快適に、まさに何のアレルギーもない方と同じように過ごすことが出来ます。
ではなぜこの注射が悪魔の治療と言われるのか。まず全ての人に効果があるというわけではありません。その他皮膚が変性したり、月経不順になったり、不正性器出血を起こしたり…等などのさまざまな有害事象(副作用)が起きることがあるのです(しかも予測不能)。そのため学会からは行わないように!と警告が出ている曰わくつきの処置なのです。
と言ってもあまりにも簡便に完璧に花粉症をコントロールでき、上記の様な副作用が全く出ない方もいるので希望される方は多々おられます。
悪魔「ケケケ・・・やっちまえ!楽になれるぞ!。」
天使「お止めなさい。後で後悔する事になるかもしれませんよ。」
まさに・・・
・・・当院では行っております。